トンカラトンが怖い
トンカラトンが怖い
君はトンカラトンを知っているか。
トンカラトンは妖怪だ。包帯を全身に巻き、日本刀を背負って自転車に乗っている。
「トン、トン、トンカラトン」と口ずさみながら現れ、「トンカラトンと言え」と問いかけてくる。そして「トンカラトン」と返事をしないと背中の日本刀で切りつけられ、切られた人間もまたトンカラトンになってしまう。
都市伝説の妖怪には大抵の場合対処法が存在する。口裂け女はポマードと三回唱えれば逃げていくし、さっちゃんは枕元にバナナを置いておけば助かる。
一見トンカラトンも口裂け女たちと同類であるかのように思える。
……が、もしそうであれば怯える必要は無い。そうではないのだ。
トンカラトンは稀に集団で現れることがあり、一斉に「トンカラトンと言え」と問いかけてくる。そして言われた通り「トンカラトン」と返す。すると一番後ろのトンカラトンが
「俺は『トンカラトンと言え』と言わなかった……」
と言って相手を切りつけ、その相手は哀れ彼らの一員となってしまったのである……
ハァ?
なんだこれは。めちゃくちゃだ。そんなのがまかり通ってしまうようならもう何でもありじゃないか。
それでいて、キックボードに乗ったトンカラトンは相手が土手や砂利道に逃げると「舗装されておらず走りづらいから」という理由でそれ以上追ってこない。
ますます訳が分からない。そんなの自転車でも同じじゃないか。しかし本では「キックボードに乗ったトンカラトン」と限定されている。
こんな理不尽さと妙な律儀さを併せ持つトンカラトンは小学生たちに大きなトラウマを植え付け、「花子さんががきた!」シリーズの顔といっても過言ではない存在となった。
しかしこのトンカラトン、その人気(?)からかアニメでは人間の子供に自転車の乗り方を教わったり、少年と一緒に銭湯に入ったりするなど、以前の狂気は何処へやら、すっかり丸くなってお茶目な三枚目キャラと化してしまうのである。
もう呆れた。なんなんだ。妖怪のくせにテコ入れをするな。
そういった意味でも、私はトンカラトンが怖い。